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関節リウマチの治療目標とは

関節リウマチの治療目標は寛解です。
抗リウマチ薬や生物学的製剤の登場などによって、関節リウマチの治療は飛躍的に進歩し、単に痛みや炎症を抑える対症療法から、早期に適切な治療を開始することによって、寛解を目標とした治療が可能となってきました。これに伴って寛解の基準や症状の評価方法なども変わってきています。
基本的には以下の3つのポイントを念頭に治療を行うことになります。
※寛解(かんかい):リウマチの症状が軽減またはほぼ消失し、病気をコントロールできている状態

関節の痛みや腫れをとること
骨・関節破壊の進行を抑えること
生活機能(QOL)を改善すること

T2Tというアプローチ方法について

T2TとはTreat to Targetの略で、「目標達成に向けた治療」と訳されます。これは、関節リウマチの治療が寛解を目指せるようになり、これを実践するために提唱されたアプローチ方法です。「関節リウマチの治療は、患者さんと主治医が共に決めるべき」「もっとも重要なゴールは、長期にわたって生活の質(QOL)を良好に維持すること」「治療ゴールを達成するためにもっとも重要な方法は、関節の炎症を止めること」「明確な目標に向けて、疾患活動性をチェックし、目標が達成されない場合には治療を見直すことで、その疾患活動性をコントロールする」といった基本原則に加えて、以下のような治療指針が示されています。

目標到達に向けた治療(T2T)における10項目のリコメンデーション
関節リウマチ治療の目標は、まず臨床的寛解を達成することである。
臨床的寛解とは、疾患活動性による臨床症状・徴候が消失した状態と定義する。
寛解を明確な治療目標とすべきであるが、現時点では、進行した患者や長期罹患患者は、低疾患活動性が当面の目標となりうる。
治療目標が達成されるまで、薬物治療は少なくとも3カ月ごとに見直すべきである。
疾患活動性の評価は、中~高疾患活動性の患者では毎月、低疾患活動性または寛解が維持されている患者では3~6カ月ごとに、定期的に実施し記録しなければならない。
日常診療における治療方針の決定には、関節所見を含む総合的疾患活動性指標を用いて評価する必要がある。
治療方針の決定には、総合的疾患活動性の評価に加えて関節破壊などの構造的変化及び身体機能障害もあわせて考慮すべきである。
設定した治療目標は、疾病の全経過を通じて維持すべきである。
疾患活動性指標の選択や治療目標値の設定には、合併症、患者要因、薬剤関連リスクなどを考慮する。
患者は、リウマチ医の指導のもとに、「目標達成に向けた治療(T2T)」について適切に説明を受けるべきである。

(Smolen JS, et al.Ann Rheum Dis 2016;75(1):3-15.より引用改変)

治療効果の評価方法

DAS28

疾患活動性(病気の勢い、症状の強さ)を評価し、治療を検討します。

計算式:以下の4項目(あるいは全般的健康状態を除く3項目)から算定します。

下図の28関節に対する

  • TJC28:圧痛関節数
  • SJC28:腫脹関節数
  • ESR:赤血球沈降速度(mm/1時間)あるいはCRP(mg/dL)
  • GH:全般的健康状態(100mmVAS*)

*VAS:visual analogue scale

DAS28.THE DAS-score website. http://www.das-score.nl/ [accessed 2017.1.30]
神崎 初美、三浦 靖史(編集): リウマチケア入門, MCメディカ出版, 東京, p57, 2017 より作成

疾患活動性(病気の勢い、症状の強さ)を評価し、治療を検討します。

川人豊:関節リウマチの最新薬物療法, 医学と看護社, 千葉, p37, 2012、
岸本勇二:知っておくべき!整形外科医の関節リウマチ診療ABC(久保俊一責任編集), 文光堂, 東京, p98, 2016 より引用、改変
DAS28.THE DAS-score website. http://www.das-score.nl/ [accessed 2017.1.30]
神崎 初美、三浦 靖史(編集): リウマチケア入門, MCメディカ出版, 東京, p57, 2017 より作成

SDAI

SDAI による活動性評価

1)圧痛関節数(28関節) 2)腫脹関節数(28関節) 3)患者による全般評価(VAS による) 4)医師による全般評価(VAS による) 5)CRP 
5項目を設定し、以下の公式により算出する

SDAI = 圧痛関節数(28関節)+腫脹関節数(28関節)+患者による全般評価(VAS 0~10cm)+ 医師による全般評価(VAS 0~10cm)+CRP(mg/dL)

SDAI による活動性評価

  寛 解 低疾患活動性 中疾患活動性 高疾患活動性
SDAI
≦3.3
3.3<、 ≦11
11<、 ≦26
26<

岸本 勇二:知っておくべき!整形外科医の関節リウマチ診療ABC(久保 俊一責任編集), 文光堂, 東京, p98, 2016 より引用、改変

CDAI

CDAI による活動性評価

1)圧痛関節数(28関節) 2)腫脹関節数(28関節) 3)患者による全般評価(VAS による) 4)医師による全般評価(VAS による) 
4項目を設定し、以下の公式により算出する

CDAI = 圧痛関節数(28関節)+腫脹関節数(28関節)+患者による全般評価(VAS 0~10cm)+ 医師による全般評価(VAS 0~10cm)

CDAI による寛解基準

  寛 解 低疾患活動性 中疾患活動性 高疾患活動性
CDAI
≦2.8
2.8<、 ≦10
10<、 ≦22
22<

岸本 勇二:知っておくべき!整形外科医の関節リウマチ診療ABC(久保 俊一責任編集), 文光堂, 東京, p98, 2016 より引用、改変

ACRコアセット

T2Tによって寛解は関節リウマチの治療における現実的なゴールとして設定されるようになりました。これに伴い、寛解の基準をはじめとする治療効果の評価もより詳細かつ厳格なものとなってきました。例えば、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology, ACR)では、以下のような治療評価を定めています。

圧痛関節数(痛みのある関節の数) 膨張関節数(腫れのある関節の数)

患者による疼痛評価 患者による全般活動性評価
医師による全般活動性評価 患者による身体機能評価
(HAQ=衣類の着脱や食事、歩行など8項目)
急性期反応物質の値(ESR、CRP)

およびが20%以上改善し かつ③~⑦のうち3項目で……

  • 20%以上の改善が認められた場合→ACR20:有効性を示す最低限の指標
  • 50%以上の改善が認められた場合→ACR50:患者の満足度を反映する指標
  • 70%以上の改善が認められた場合→ACR70:臨床的寛解に近い指標

(Felson DT,et al.Arthritis Rheum 1995;38:727-735.より引用改変)

改変シャープスコア

このほか、関節破壊の程度や進行状況を単純レントゲンで客観的に評価する場合には、改変シャープスコアが広く使用されています。これは図のように手足の関節の各部位における骨びらん(炎症による骨病変・欠損)、関節裂隙狭小化(軟骨の摩耗や関節の変形によって、関節の隙間が狭くなること)の程度をそれぞれスコア化して評価します。

van der Heijde 改変シャープスコアの評価部位

手の骨びらんは片側16 部位、関節裂隙狭小化は片側15 部位、足では骨びらん、関節裂隙狭小化とも同一の片側6 部位です。

(van der Heijde D.J Rheumatol 2000;27(1):261-263.より引用改変)